グルタミンのサプリメント

 話はしばらくタンパク質の効果からそれていたが元に戻す。今までに述べてきたことは①肉食はグルタミン濃度を上げる。②グルタミン濃度が上がれば免疫系が強化されて感染症に罹りにくくなる。③グルタミン濃度の上昇でヒアルロン酸などグリコサミノグリカンが合成されて関節痛になりにくくなる。④グルタミンの合成は筋肉のグリコーゲンを使って筋肉で行われるので筋肉を鍛えておく必要がある。以上の4点である。このようにグルタミンは健康維持には極めて重要なものであるが,十分に食事を摂れなくなった人,あるいは運動ができない人ではでは食事だけでグルタミン濃度を維持することは困難である。  

 抗生剤の効かない院内感染のニュースを見聞きすることがあるが,寝たきりの入院患者は十分な食事が摂れないために摂取するタンパク質が少ない上に,筋肉が衰えているのでグルタミン合成が大幅に低下する。このため血中グルタミン濃度の低下は避けられず感染症に罹ることになる。このような人たちにはグルタミンのサプリメントが必要となるがグルタミンを摂るときには注意を要する。最大の問題はグルタミンが酸に弱いことである。特に胃液の酸性度が最もグルタミンの分解を引き起こしてしまう。

 グルタミンを弱酸性(pH4)の溶液に移すとごく短時間で約50%が分解してピロリドンカルボン酸とアンモニアを生じる。分解速度が速いのにその分解が50%で止まってしまうのは奇異に感じられるが,このことは弱酸性下ではグルタミンは下図に示したアミノ基非解離型とアミノ基解離型の平衡状態で存在し,この平衡が1:105と大きくアミノ基解離型の方向に傾いていること,および酸性で分解してピロリドンカルボン酸となるのはごく少量存在するアミノ基非解離型であることから説明されるが詳細は省く。

 グルタミンはこのように弱酸性下で分解する性質があるので胃では胃酸で分解する。ただ半分は残るので効果は期待できなくはないが,分解したグルタミン量に相当するアンモニアが発生するので遊離のアミノ酸として飲むのは避けるべきである。ペプチドの形になりグルタミンのアミノ基がふさがれていると分解は起こらないのでグルタミンはタンパク質あるいはペプチドとして摂るべきである。市販品としては小麦粉のタンパク質であるグルテン酵素で部分的に加水分解して消化吸収しやすくしたグルタミンペプチドがある。この物はグルタミンを30%ほど含み,安定で他のアミノ酸も含まれているのでサプリメントとしては適している。

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