少子化に関して思うこと

日本と言わず世界の先進国で出生数の減少が起こっている。中国の様に人口の多い国では一人当たりの収入が低くても国としては経済力,軍事力も強くなるので国は人口の増加を望むのであろうが,地球の食糧,エネルギー,環境汚染などの問題を考えれば日本の人口は5千万人くらいに下げた方がいいように思う。大事なことは一人当たりの豊かさである。

政府は国力を強くしたいので少子化を防ごうとして国民に一時金を配布しているがこれは票稼ぎには役立つかもしれないが少子化を防ぐには何の役にも立たない。なぜ少子化が起こっているか。それは女性が社会に出て活動し始めたことに起因するが,働く意思がある人が働くのは当然のことである。中には家庭で子育てと家事に専念したいと思っていても連れ合いの収入だけでは生活ができないので働きに出る女性も多くいることと思う。夫婦が共に働いているならば欠かせないものは保育所である。共働きの夫婦は子供を預けるところが無くてどうして子供を作ることが出来るだろうか。政府は少子化を防ぎたいと思うなら,働く人の給料を上げること,保育所を完備することである。一時金を配ったところで票集めには効果があるかもしれないが国の財政赤字を増やすだけで効果は全く期待できない。勿論,給料を上げること難しいことであろうが上げる努力はして欲しいものである。何事も改善しなければならないことが起こった時はその原因を考えて手を打たねばならないことは当たり前のことである。

もう一つ,少子化に関連してよく報道で一人の女性が一生の間に産む子供の数を表す日本語として「特殊出生率」なる言葉を目にする。これはspecific birth rateを日本語訳した言葉であるが,自然科学分野ではこのようなときに"specific" の日本語訳として「比」が用いられる。例えばある物質1グラムを1℃上げるのに必要な熱量specific heat capacityの日本語訳は「比熱」であるし,またある物質と水の単位体積当たりの質量比specific gravityは「比重」である。また生化学分野で使う酵素タンパク質1mg当りの活性specific activityの日本語は「比活性」である。このような自然科学分野での言葉の使い方を考慮するならspecific birth rateの日本語訳は「比出生率」とすべきである。それにしても「特殊出生率」とはおかしな訳をしたものである。多分,最初に日本語訳した人が自然科学分野での一般的な言葉の使い方を知らなかったためにこのような日本語ができたものと思う。確かに辞書でspecificを引けば「特殊の」「特有の」というような訳が出てくるのでこのような訳となったのであろうが,一人の女性が一生の間に産む子供の数がどうして特殊なのか。全く恥ずかしい訳である。specific birth rateの日本語は「比出生率」に改めるべきである。