敵基地攻撃能力

ロシアによるウクライナに対する武力侵攻は日本人の軍備に対する考えに大きな影響を与えている。これを機会に政府は軍事費を2倍に増額しようとしている上に自衛隊に敵基地攻撃能力までも持たせようとしている。敵基地攻撃能力とは相手がミサイルで攻撃しようとする兆候があればその前に相手のミサイル基地を攻撃して潰してしまおうとするものである。戦争が始まってしまえばすでに攻撃し合っていて敵基地を攻撃している(自衛という大義名分で)わけだから,ここで問題となる敵基地攻撃能力というのは戦争が始まる前の段階での攻撃ということになる。だから政府は「敵基地攻撃能力」という言葉が先制攻撃と受け取られるのを嫌って「反撃能力」と言ってごまかしているが相手が攻撃をする前に攻撃するのであるから先制攻撃には変わらない。

敵のミサイルは一か所から飛んでくるわけではない。数か所から攻撃が仕掛けられるであろう。潜水艦からも飛んでくるかもしれない。そのようにいくつもの所から飛んでくるミサイルをすべて叩き潰せることができればよいが,そんなことは不可能に近い。こちらから先に攻撃を仕掛ければ相手に攻撃の口実を与えるだけである。叩き潰しそこなった基地から飛んできてしまう。先に攻撃を仕掛けたという汚名が残るだけである。どう考えても敵からのミサイル発射前に敵基地を叩き潰すという戦法が成功するとは思えない。今回の参議院議員選挙でもロシアのウクライナ侵攻に乗じて敵基地攻撃能力を備えることを公約に掲げている政党がいくつかあるが,憲法によって戦力を持つことが禁じられている日本でどう解釈すれば先制攻撃が許されるのであろうか。どうも候補者が日本国憲法を理解していないかあるいは軍事的な必要性よりはアメリカからの圧力と軍需産業の活性化による日本の景気促進が裏にあると思えてならない。

もう一つ,とんでもないことは国の予算はどうしても必要なものと判断された後にその金額考慮して決められるのにその議論が全くなされずにいきなり倍増しようとしていることである。こんなとんでもないことが許されるはずがない。防衛費の倍増を許せば5,6兆円ほどの予算が必要である。現在の国の財政は1000兆円を越える借金を抱えている。さらに最近のアメリカでの利上げによって行き過ぎた円安になっているが,日銀は借金で身動きが取れない状態で日本での利上げが出来ず,円安に対して打つ手がなくなっている。1%の利上をすれば利息だけで10兆円も支出が増えるからである。防衛費を倍増すればさらに日本の財政赤字が増加する。こんなことが許されるのか。日本をこのように首の回らない借金まみれの国にしたのは国の予算を国民のためではなく自分たちの票稼ぎのために使ってきた身勝手な国会議員のせいである。