2018-01-01から1年間の記事一覧

平成は格差拡大の時代

平成はあと残すところ4か月となった。30年間を振り返って感じることは平成の時代は格差拡大の時代であったと思う。私は若いころは社会主義が優れた政治体制であると信じていた。しかし,1989年(平成元年)にベルリンの壁がなくなり,それに引き続いてソ連お…

数字は魔物

日産前会長のゴーン氏が不正に大金を手に入れていたことが大きな問題となっている。年収10億円も稼いでいるのに,なぜ不正な手段を使ってまでさらに大金を得ようとするのか不思議に思える。楽に生活するために金が欲しいということなら年に3千万円もあれば…

美味しい日本酒

私は日本酒が好きであるが,なかには日本酒独特のムッとした臭いのものがあり美味しいとは言い難いものもある。この原因物質はアセトインと言われている。アセトインはミトコンドリアに存在するピルビン酸脱水素酵素の働きで生成する。ミトコンドリアはグル…

粉茶の効用

テレビで放送される健康に関する番組には信用できず,見ていて腹の立つものが多いが,NHKはさすがである。特に“ためしてガッテン”は興味深いものが多い。数年前にこの番組で静岡県掛川の深蒸し茶について放送されたことがあった。掛川地方では深蒸し茶が広く…

筋グリコーゲンとグルタミン-健康維持の生化学を終えるにあたって-

一年間にわたり健康にまつわる問題,特に肥満,運動,飲酒の生化学について書いてきましたが,お伝えしたいことは大体書いたように思いますので,このシリーズはこれで一区切りつけたいと思います。本来ならば生体物質についての説明から始めなければならな…

健康的な酒の飲み方7 ストレスを受けて空腹で飲むと骨が弱くなる

前回にストレスを受けて酒を飲むと肝臓の細胞が壊死することを述べた。今までにラットにアルコールを飲ませて肝障害モデルを作ろうとした実験が行われてきたがすべて失敗に終わっている。一説にはラットの寿命(2~3年)が短いために肝障害が起る前に死んで…

健康的な酒の飲み方6 酒は楽しく飲むべし

ビール一本,あるいは清酒一合飲むと4時間の間は肝臓で使われる酸素はすべてアルコールを酢酸にまで酸化するために使われることはすでに述べたところである(6月24日の本記事参照)。そのために生じた酢酸は肝臓では酸化されないで筋肉に運ばれて酸化される…

健康的な酒の飲み方5 アルコールには利尿作用があるか?

アルコールは利尿剤と言われているが,これは本当に正しいであろうか。少なくとも私にはその代謝を考えると利尿剤とは思えないし,経験的にもビールを飲んだ時以外にはその利尿作用が感じられない。アルコールを飲んでいると高血圧になるという事実も利尿作…

健康的な酒の飲み方4 ウイスキーは水で割って飲むべし

摂食後のインスリンレベルが上昇しているときに飲んだアルコールは脂肪になりやすいことを前回で述べたが,ウイスキーやブランデーのようなアルコール濃度の高い飲み物を飲むときは別な問題が生じる。タンパク質が熱や酸,アルコールで変性することはよく知…

健康的な酒の飲み方4 食べながら飲むと脂肪太りになりやすい

前回で悪酔いの原因は低血糖であることを述べた。二日酔いには触れなかったが,二日酔いも低血糖に起因する。血糖濃度が下がれば脂肪組織ではホルモン感受性リパーゼが働き脂肪酸が血中に送り出される。悪酔いをしなくても低血糖が長く続けば血中脂肪酸濃度…

健康的な酒の飲み方3 悪酔いの原因は低血糖である

ヒトは空腹時に血糖濃度の低下を防ぐため肝臓に蓄えていたグリコーゲンを分解するとともに,タンパク質の分解で生じたアミノ酸からグルコースを合成して血中に放出する。アミノ酸からのグルコースの合成にはクエン酸回路が関与するが,クエン酸回路の代謝はN…

健康的な酒の飲み方 2.清酒1合,ビール1本分のアルコールの代謝に4時間かかる

アルコールが代謝されるには酸素が必要である。大酒飲みではない普通の人では①,②の脱水素酵素系が主な代謝系であるが,この系で1モルのアルコールが酢酸にまで代謝される際には1モルの酸素が必要である。ビール大瓶1本飲めば約30グラムのアルコール,す…

健康的な酒の飲み方 1.アルコール代謝に関わる酵素

今回から健康に大きな影響を与えるアルコールの話をしたいと思う。世間では多飲は健康に悪い事になっているが,世の中にはかなりの量を飲んでいても健康な人がいることはアルコールは飲み方次第で安全な食品となり得る事を示している。アルコールの代謝の話…

トレーニング以外で持久運動能を向上させる方法-グルタミンペプチドサプリ

持久運動のパフォーマンスを向上させるために筋肉中のグリコーゲン蓄積量を増加させようとしてアスリートはトレーニングに励んでいるが,サプリメントで持久力が改善できれば有難いことである。グリコーゲンが枯渇すればクエン酸サイクルの代謝中間体を供給…

ミトコンドリアを増やす

もう一つ,持久力を増強する方法はミトコンドリアを増やすことである。持久運動時には脂肪酸がミトコンドリアで燃やされて生じるATPが主なエネルギー源となるが,これだけではパワー不足である。運動時にはグリコーゲンをも分解し,これを解糖系で代謝するこ…

グリコーゲンローディング

筋肉のグリコーゲン蓄積量を増やす目的でおこなわれる方法がグリコーゲンローディングである。レースの一週間ほど前から3,4日間炭水化物食を極力摂らないで,代わりに肉や乳製品などを食べる。そしてこの間はげしい練習を行うことで筋肉中のグリコーゲンを…

トレーニングによるグリコーゲン合成系酵素量の増加

持久運動のエネルギー源は脂肪酸であるが,脂肪酸を燃やすために糖が必要であるので筋肉の持久力は蓄えられたグリコーゲン量によって制限される。このために筋肉のグリコーゲン蓄積量を増やすことができれば持久運動能が改善されることになる。グリコーゲン…

持久運動にも筋肉のグリコーゲンが必要である

運動時には筋肉では脂肪酸が優先的に利用され血中のグルコースは利用されない。これは以前にも述べたように脂肪酸が代謝されるとその代謝物がグルコースの酸化を阻害すること,およびグリコーゲン分解で生じたグルコースのリン酸化合物(グルコース6-リン酸…

持久運動のエネルギー源

ヒトは安静時では1 kcal/分のエネルギーを消費する。また,おおまかに歩行では5 kcal/分,マラソンでは一流ランナーの場合は20 kcal/分のエネルギーを消費すると言われているが,一般の人がマラソンを走るときは多分一流ランナーの半分もエネルギーを消費す…

運動時のエネルギー供給:白筋と赤筋

骨格筋には赤色の強い筋肉と白またはピンク色の筋肉の2種類がある。心筋などは濃い赤色であるが,鶏肉や豚肉はピンク色である。この違いはミトコンドリアの含量による。持久運動に優れた筋肉はミトコンドリアを多く含み,瞬発力に優れた筋肉はミトコンドリア…

筋肉が運動時に血糖を利用しないメカニズム

今回からしばらくは運動時のエネルギー供給について述べようと思う。 体内で筋肉のエネルギー源となる主な物質は脂肪酸,グリコーゲン,血液中のグルコース(血糖)である。筋肉は運動時に脂肪酸を最優先して利用するが,負荷が強くなると脂肪酸からではATP…

ダイエットによる体重の減少は1ヵ月に 2 kg が限界である

良く知られているように食品1g当たりのエネルギー量はタンパク質と糖質では4 kcal,脂肪では9 kcalである。タンパク質と糖質は体内では水を含んで存在するので乾燥重量の1gは約4gとなる。しかし脂肪は殆ど水を含まないので体内でもほぼ1gである。このこと…

脂肪を減らすための運動は空腹時が効果的

多くの人がジョギングやウオーキングを行っている。目指すところは脂肪を落とし健康な体を作ることと思われるが,脂肪の落ち方は運動を行うタイミングによって変化する。 前回と前々回で述べたように摂食後は脂肪組織からの脂肪酸放出速度が低下し血中脂肪酸…

脂肪酸濃度が上昇するとグルコース消費が止まり肝臓はグルコースを産生する

ヒトの体内では脂肪酸とグルコースが同時に供給されると脂肪酸を優先して使用することはすでに述べてきたところである。血中の脂肪酸濃度が増加するのは空腹時であるが,このときグルコースを消費したのではたちまちのうちに低血糖に陥り脳の機能が失われて…