健康的な酒の飲み方4 食べながら飲むと脂肪太りになりやすい

 

 前回で悪酔いの原因は低血糖であることを述べた。二日酔いには触れなかったが,二日酔いも低血糖に起因する。血糖濃度が下がれば脂肪組織ではホルモン感受性リパーゼが働き脂肪酸が血中に送り出される。悪酔いをしなくても低血糖が長く続けば血中脂肪酸濃度が高くなった状態が維持される。過剰な脂肪酸からは肝臓でケトン体が合成されるので翌朝はケトアシドーシスとなって気分が悪くなる。急性の悪酔いも二日酔いもグルコースの静脈注射でケロリと治る。嘔吐しなければ糖分の多い甘い飲み物を飲んでもかまわない。

 低血糖が悪酔いの原因であるならば,これを防ぐには食べながら飲めばよいことになる。実際に炭水化物を十分に食べてから飲めば悪酔いは起こりにくいことは多くの人が経験していることである。しかし,炭水化物を多く食べた後に飲むと飲んだアルコールはすべて脂肪となってしまうので注意しなければならない。

 通常は肝臓では過剰に摂った炭水化物から脂肪合成が行われる。グルコースは解糖系で代謝されてピルビン酸を経てアセチル-CoAを供給する。過剰なアセチル-CoAは脂肪合成に利用されるが,この合成のためにはインスリンレベルが上昇していなければならないが,炭水化物を摂って血糖濃度が上がっているので速やかに脂肪合成が進行する。炭水化物をあまり食べないでアルコールを飲んだ時は血糖濃度が低下するのでアルコールからアセチル-CoAが供給されても脂肪合成は起こりにくい。飲んだアルコールは肝臓で酢酸あるいはケトン体となった後に筋肉で消費される。ところが,悪酔いを防ごうとして炭水化物食を多く摂ったあとでアルコールを飲むと,インスリンレベルが上昇しているので飲んだアルコールからは速やかに脂肪が合成されてしまう。要は多くを飲まなければ良いわけである。

 私の経験ではアメリカ人はディナーの際にワインを飲みながら食事をし,その後で甘いデザートを食べ,さらにその後でウイスキーを飲むようである。特に甘いデザートでインスリンレベルを上げてアルコールを飲めば飲んだアルコールはすべて脂肪になってしまう。街でビール樽のように太った人を時々見かけたがその原因が理解できる。日本人は飲むときには多くの場合,ご飯を食べないでおかずを肴として飲み,最後に軽くご飯を食べるのが一般的のようである。この飲み方は理想的である。