健康的な酒の飲み方4 ウイスキーは水で割って飲むべし

 摂食後のインスリンレベルが上昇しているときに飲んだアルコールは脂肪になりやすいことを前回で述べたが,ウイスキーやブランデーのようなアルコール濃度の高い飲み物を飲むときは別な問題が生じる。タンパク質が熱や酸,アルコールで変性することはよく知られている。卵に熱を加えると卵白部分が白く固まるがこれはタンパク質の変性の結果である。生卵の卵白のごく少量をコップに入れたウイスキーの中に落とし込むと透明な卵白が変性して白くなるのが観察される。卵白がアルコールで変性したからである。ウイスキーをそのままストレートで飲むと何が起こるであろうか。アルコール度の高いウイスキーが胃に入ってきても胃の中に溜まっている水分で薄められるので胃壁がダメージを受けることは少ないと思われるが,食道は水分を蓄えていないのでタンパク質を変性させうる濃度のアルコールに触れることになる。その結果,食道表面の細胞は死んでしまう。死ねばまた新しい細胞ができる。ウイスキーをストレートで飲む習慣の人はこのような刺激と細胞死が常に繰り返されることになる。何回も繰り返している間にDNAに変異が起こり癌化することは大いにあり得ることである。実際に私のまわりで食道がんを患った人にはウイスキーの好きな人が多いようである。どうも私の心配が当たっているように感じられてならない。

 ウイスキーを常時飲む人が食道のタンパク質変性を防ぐにはウイスキーを薄めて飲む以外にない。どれくらい薄めれば良いかが問題である。ウイスキーを段階的に薄めて卵白のタンパク質でその変性を調べたところ,3倍にまで薄めると変性は起こらないことが分かった。ただ,この変性は卵白での変性であって食道表面のタンパク質ではないので目安としかならないが,ウイスキーのアルコール濃度は42%くらいだから,14%では変性が起こらないことになる。丁度,日本酒と同じ濃度である。しかし,私のようなケチな人間には1本数万円もするまろやかなウイスキーやブランデーを水で薄めて飲むなんてもったいなくてとてもつらいことである。酒好きの人には同じように感じる人が多いと思う。そのような人はどうするか。少しだけ口に含み,良く味わって飲み込む。飲んだらあまり時間をおかないで食道を洗うように水を飲む。少量であれば唾液で少しは薄まるのでタンパク質の変性も多少は抑えられる。少しずつ飲むべきである。もったいないことであるがウイスキーはストレートを避けて,3倍程度に薄めて飲むのが良い。いくら薄めるのが嫌でもせめてオンザロックくらいで少しずつ飲むようにすべきである。