ダイエットによる体重の減少は1ヵ月に 2 kg が限界である

 

 良く知られているように食品1g当たりのエネルギー量はタンパク質と糖質では4 kcal,脂肪では9 kcalである。タンパク質と糖質は体内では水を含んで存在するので乾燥重量の1gは約4gとなる。しかし脂肪は殆ど水を含まないので体内でもほぼ1gである。このことは貯蔵エネルギー源として極めて都合が良い。体脂肪率15% 体重60 kg の人では脂肪量は9 kg である。この脂肪と同じエネルギー量を糖質で蓄えようとすると湿重量でおよそ80 kg の糖質が必要となる。脂肪は軽くて便利な貯蔵エネルギー源であることが理解できる。しかしこのことは逆に減らそうとしたときにはなかなか減らないということを意味している。例えば運動を行うことにより1日に摂取するより500 kcal 多くエネルギーを消費し,この生活を1週間続けたとする。そしてこの500 kcalのエネルギーがすべて脂肪の燃焼で供給されたとしても1週間で脂肪は400 g しか減らない。1日を消費するより500kcal 少ない食事で過ごすことはつらいことで,この生活を1ヵ月続けることは殆ど不可能なことである。脂肪を1週間に400 g,1ヵ月に2 kg 減らすことがいかに難しいか理解できると思う。よくダイエットをして1週間に2 kg 減量したなどと聞くことがあるが,これが本当であるとしたらこれは水分の減少に加えてタンパク質(主に筋肉)の減少に因っていると思われる。無理をして減量すると筋肉のない体になってしまう。脂肪を減らそうと苦労して筋肉を減らしてしまっては何をしたかわからない。体重が1ヵ月に2 kg以上減少した時はタンパク質も減っていると思わなければならない。

 なお,脂肪には皮下脂肪と内臓脂肪があって,内臓脂肪が生活習慣病のもとになることはよく知られている。これは内臓脂肪が皮下脂肪に比べて代謝回転が速く,そのために血中脂肪酸濃度が上がりやすいことに因っている。血中脂肪酸濃度が高いとグルコース代謝が阻害され血糖濃度が上昇するからである。しかし,内臓脂肪の代謝回転が速いということはダイエットを行ったときには減りやすいことを意味している。内臓脂肪は健康には悪いものであるが運動を行えば容易に減少させることができる。

 運動が内臓脂肪の蓄積を防ぐのにいかに効果的かは力士を見ればよく分かる。力士は体重を増やそうとして一般人とは比べ物にならないほどの量の食事を摂るのに内臓脂肪は殆ど溜まってないということである。力士は大食いにもかかわらず糖尿病になる率も非常に低い。朝食の前に空腹状態で激しい稽古をするためである。