美味しい日本酒

 私は日本酒が好きであるが,なかには日本酒独特のムッとした臭いのものがあり美味しいとは言い難いものもある。この原因物質はアセトインと言われている。アセトインはミトコンドリアに存在するピルビン酸脱水素酵素の働きで生成する。ミトコンドリアグルコース濃度が高いと発達が抑えられて機能しない(グルコース抑制)が,グルコース濃度が低下すると抑制が解けて機能を持ったミトコンドリアに発達する性質を持っている。このためアルコール発酵の際に糖分(グルコース)が残っている間はミトコンドリアが発達しないのでピルビン酸脱水素酵素もほとんど存在せず,アセトインも産生されないが,辛口の酒を造ろうとして糖分がほとんど無くなるまで醗酵を続けるとミトコンドリアが機能を持ち始めてピルビン酸脱水素酵素量も増えてくる。その結果,アセトインが作られて独特のムッとした臭いが生じてしまう。とはいえ最近は美味しい酒に出会うことが多い。日本の職人の技は本当にすごいとつくづく思う。

 先日あるスーパーでコップ酒(菊正宗しぼり立て)を配布していたので受け取った。タダでもらったものだから全く期待していなかったが冷やして飲んでみたところ,ものすごく美味しい。その店に買いに行ったところ酒はパック入りで0.9L入りが600円くらい,1.8L入りがその2倍の1200円位くらい。昔の二級酒の値段である。半分の量でも割高にならないのもうれしい。高価な酒は美味しいのが当たり前であるが,安くておいしい酒を見つけたときは本当に嬉しいものである。