大相撲の力士は体重を減らさなければならない

 大相撲初場所稀勢の里の引退,全横綱の休場を含め多くの休場力士がでて大変な場所となったが,貴景勝,御嶽海,北勝富士,阿武咲,明生,朝の山,豊山ら有望な若手が力をつけてきて新しい時代の到来が感じられた。ただ,大きな問題は幕内と十両の70名の力士のうちで9名の力士が休場したことである。余りにも多すぎる。休場しなくても殆どの力士の膝,足首にテーピングが見られることは深刻な問題である。ケガが多い原因の一つは体が重すぎるためであることは間違いない。体が重すぎるから投げられた時や土俵から落ちた時にケガをするし,相手にも体重がかかり過ぎてケガをさせることになる。幕下以下にも体が大きすぎて自由に動くこともできず将来が絶望的な力士も見受けられる。各部屋の親方たちも体重オーバーの問題を自覚しなければならない。

 ところが問題視するどころか,相撲放送を聞いていると解説者が体重の軽い力士に対して体当たりのときの威力を上げるためには体重を増やすことが大事であるなどと言っているのを聞くことがある。筋肉を増やして体重を増加させることはなかなか難しい。簡単に体重を増やす方法はメシをたくさん食べることであるが,それでは脂肪が増えるだけでパワーが強くなるとは思えない。多分,立ち合いに当たった時に運動量のエネルギーだけで相手を土俵外へ持って行こうとするから重いほど威力があるように考えるのだろう。立ち合いで当たった時の威力を強くするのに大事なことはぶつかったときの姿勢,体の角度である。水平に押そうとしても大きな威力とはならない。水平に押そうとするから体が重いほど大きな力が出ると思うのである。体当たりをしたときには腰を低く構え,前傾姿勢で下から上に向かって突きあげて相手の体を起こし,下から上に向かって押せば筋力に比例して力が出るし,相手は浮き上がる。さらに細かいことを言うと,この時に上半身の力ではなく下半身の力を使うことである。筋肉量は下半身に圧倒的に多いからである。その下肢の筋力が強ければ強いほどパワーは増す。何も役に立たない脂肪を増やす必要は全くない。不要な脂肪を増やして自分の体も持て余す状態になりケガが多くなっている現状はあまりにもバカバカしいことである。

 現在の幕内力士の平均体重は166kgであるが,最近活躍した千代の富士貴乃花朝青龍日馬富士白鵬の成績を見れば150kgもあれば十分であることが理解できると思う。過去に大乃国逸ノ城が重すぎる体重に気づいて減量しようとしたが,その後,強かった大乃国は弱くなって引退に追い込まれた。逸ノ城も大きな体が軽くなって簡単に寄り切られる相撲が多くなった。いくら上手に減量しても筋肉を減らさないで減量することは不可能に近い。効果的に脂肪を燃やすには空腹状態を維持することで血中脂肪酸濃度を上げて稽古をしなければならず,そうなれば血糖濃度を維持するために筋肉の分解が避けられない。力士が筋肉量を減らすようなことをしてはおしまいである。筋肉が増えるときには体重は増え続ける。しかし,増えすぎれば減量しなければならなくなるから,体重増を最小限に抑えて筋肉量の増加を目指すことが大切である。日頃から稽古に励み,減量などしなくてもよい体を作らなければならない。相撲協会には力士の体重が増えすぎないように教育・指導を行っていただきたいと思う。

 このことは一般人の我々にも当てはまる。筋肉が衰えれば摂取したエネルギーを消費しきれず脂肪太りが起こる。脂肪太りになったあとにダイエットをすれば余程気を付けて減量しない限り筋肉も減少して脂肪が溜まりやすい体になってしまう。日頃から筋肉を鍛えながら脂肪の蓄積を防ぐ方が良いのは当然である。