風邪の治し方

 風邪の第一段階

 だんだんと寒くなり風邪の季節がやってきました。寒くなれば風邪が流行りますが対処を誤ると大変な事態を招くことにもなりかねません。私が行っている対処法が皆様のお役に立てるように思いますので紹介したいと思います。世間では熱が出て咳が出ればひとくくりにして風邪と言っていますが,風邪には性格の異なる二つの段階があります。最初は感染したウイルスが増殖する段階であり,熱が出ます。細菌感染に対しては抗生剤という薬があってその増殖を抑えることができますが,ウイルスの増殖を抑える薬は基本的にはありません。しかし打つ手が無い訳ではありません。ウイルスが感染すると生体はリンパ球がウイルスに対する抗体を作って対処しますが,リンパ球を強化することでウイルスをやっつけることが可能となります。

 リンパ球の強化

 リンパ球のように増殖の速い細胞は核酸やタンパク質を速く合成しなければなりません。またこそのためには多量のエネルギー(ATP)を必要とします。そのために都合の良い物質がグルタミンです。グルタミンとグルコースがあれば必須アミノ酸以外のアミノ酸は体内で合成できますし,核酸合成の重要な材料もすべて供給できます。またグルタミンは容易に代謝されてエネルギー(ATP)を作り出すことができます。したがって血中グルタミン濃度を上げておけばリンパ球が速い速度で増殖することが可能となり,免疫力が強化されて風邪を引きにくくなります。

 グルタミン濃度を上げる方法

 グルタミンは筋肉でグリコーゲンから供給された炭素骨格にタンパク質の分解で生じたアミノ酸に含まれる窒素が移されることで合成されます。したがって筋肉にグリコーゲンを蓄えておいてタンパク質(肉)を十分に食べればグルタミンが合成されます。肉にはグルタミンも多く含まれますが,さらにグリコーゲンから供給される炭素骨格に肉に含まれる他のアミノ酸からも窒素が供給されてグルタミンが合成されます。筋肉に蓄えられるグリコーゲンは糖質から合成されますのでご飯,パンなども食べる必要があります。また,筋肉に蓄えられるグリコーゲン量は筋肉を鍛えれば鍛えるほど増える性質があるので日頃から運動をしておく必要があります。高齢者では筋肉を鍛えるのは無理でしょうが,衰えないように運動習慣をつけておくことが大切です。激しい運動などで疲れると風邪を引きやすいのは筋肉のグリコーゲンが減少してグルタミン合成量が低下するからです。逆に,風邪を引いたと感じた時はたっぷりと肉を食べる,さらに強力粉(グルタミン含量が比較的高い)でできたスパゲティを食べるのが効果的です。

 風邪の第二段階

 ウイルス増殖の段階で風邪を食い止めることができないと次の細菌感染の段階に進みます。ウイルスにやられた組織には雑菌が感染しやすく,感染すれば炎症が起こります。この細菌による炎症が起こった段階が第二段階です。咳が出だしたら第二段階です。こうなると飲酒あるいは入浴などを行うとますます炎症がひどくなるので血管拡張を引き起こす要因となる行為は禁物です。私はこのような時にはあらかじめ浴槽のふたをしばらくとって浴室を温めておき湯壺の中には入らないで体を洗うだけにしています。もちろん飲酒は絶対にしません。私の場合は咳が出始めたのちも飲酒・入浴を続けていると気管支炎にまで進行し,抗生剤を使わなければならなくなってしまいます。咳が出始めたら飲酒と入浴は禁物です。これに加えて睡眠を十分とっていると割と短期間で風邪は治ります。なお,第一段階では飲酒も入浴も止めた方が良いかもしれませんが私は止めてはいません。

 なおアミノ酸のグルタミンが市販されていますが,遊離のアミノ酸の形ではグルタミンは酸に弱く胃で分解されてしまいます。タンパク質またはペプチド(アミノ酸が数個~数十個結合して連なったもの)の形で摂取しなければ効果はありません。ご注意ください。