便秘薬グーフィスによる血中レステロール値の低下

 前回で述べたように現在ではコレステロール値の高い人(220mg/dL~)はスタチンと呼ばれるコレステロール合成に関わる酵素の阻害薬を飲むことになっている。しかし,この薬で阻害される酵素コエンザイムQ10と呼ばれる酸化還元性化合物の合成にも関与しているのでコエンザイムQ10も減少する。この化合物はミトコンドリアの電子伝達系の成分でATPの産生に関与しているのでこのものが減少すれば生体はATP生成に影響を受けざるを得ない。特にコエンザイムQ10が不足すれば短時間に多量のATPを消費する筋肉ではATP不足に陥ることが予想される。ATP不足に陥れば細胞は死に至るので事態は深刻である。

 3か月ほど前から私はグーフィスという便秘薬(グーフィス錠5mg)を服用し始めた。年を取ると腸管の運動が弱くなるせいか便秘になりやすい。グーフィスは腸管からの胆汁酸の吸収を阻害することで便を軟らかくする薬剤である。前回にも述べたようにコレステロールが最も多く使われるのは胆汁酸合成である。一日に約30グラムのコレステロールが胆汁酸合成に使われるが胆汁酸の95%は小腸で再吸収されて肝臓に戻り,5%は糞便とともに排泄される。すなわち一日に1.5グラムのコレステロールが胆汁酸となって排泄される。グーフィスによってこの排泄量が増えればその分体内のコレステロールが減少することになる。コレステロール値も下げ,便秘も改善するとなれば一石二鳥である。

 私は以前に心筋梗塞を患い今も3ヵ月毎に循環器内科に通院を続けているが,今日(10月8日)はその受診日であった。この3か月間 5mgのグーフィス錠剤を毎日朝食前に1錠飲んできた。その効果を知りたくてワクワクしながら主治医から血液検査の結果を見せて頂いた。6ヵ月前の結果では総コレステロール: 195mg/dL,LDLコレステロール: 106mg/dL,HDLコレステロール: 61mg/dL で,過去2年間ほぼ一定であった。今回は総コレステロール: 180mg/dL,LDLコレステロール: 90 mg/dL,HDLコレステロール: 57mg/dLであった。総コレステロールは15mg/dLも低下した。特にHDLコレステロール値は変化しなくて主にLDLコレステロール値が低下したことは素晴らしい。

 今回のグーフィスの効果は便秘と高コレステロールに悩む年寄りには嬉しいニュースである。特にこの便秘薬がスタチンと違ってコエンザイムQ10合成を阻害しないことが最大の利点である。