タンパク質を多く食べる人は元気である 2

グルタミンによる免疫力増強

 健康であるためには病気にならないことが重要である。病気の中でも感染症は免疫力を強化することである程度は避けることが可能である。疲れた時に風邪をひきやすいことは多くの人が経験することであるが,実際に体力を消耗する負荷の大きな運動の後で感染症に罹った人の割合が増加することが実験で確認されている。その実験ではマラソンやボート漕ぎのような消費エネルギーの大きな運動を行った一週間後におよそ50%の人が感染症(風邪)に罹ったことが示された。さらにこの実験を行った人たちは被験者にマラソンをさせた後,二つのグループに分けて一方には体重1 kg当たり0.1gのグルタミンを飲ませ,もう一方のグループにはグルタミンの偽物を飲ませた。その結果,グルタミンを投与しなかったグループでは51%の人が感染症に罹ったのに対しグルタミン投与グループでは感染症に罹った人は19%にまで抑えられることが示された。肉体疲労とは何かについてはその実態は明確ではないが,この実験から肉体疲労とは“グルタミン濃度の低下”であると言うことができる。

なぜグルタミンが感染症を防ぐのだろうか。体内にウイルスが入ってくればリンパ球が増殖してこれに対処するが,このときグルタミンはリンパ球のような増殖の速い細胞にとって極めて優れた栄養源となるからである。細胞が増殖するためにはタンパク質の他に核酸合成の材料と多量のエネルギー(ATP)が必要となるが,最も基本的なエネルギー源であるグルコースの他にグルタミンがあればATPも核酸合成の材料も供給されうる。核酸はDNAやRNAなどを構成する生体構成物質であるが,DNA,RNAを構成する基本成分にプリン環とピリミジン環がある。細かいことは省略するが,このプリン環もピリミジン環もグルコースの他にグルタミンがあれば合成が可能となる。さらにグルタミンは代謝されてクエン酸回路の代謝中間体であるα-ケトグルタル酸となって容易にATPを供給することができる。このことがグルタミンがリンパ球のような増殖の速い細胞の優れた材料とエネルギーの供給源となる理由である。肉にはグルタミンも多く含まれているうえにグルタミン以外のアミノ酸からも代謝によりグルタミンが生成するので肉(魚も含めて)を食べることがリンパ球の増殖を促進させ免疫力を高める最善の方法である