肥満を防ぐ:肝臓と筋肉のグリコーゲンの役割

 

 筋肉のグリコーゲンを蓄えておくことはグルタミンを供給するためには欠くことのできないものであることをすでに述べてきたが,肝臓と筋肉のグリコーゲンは生命維持に欠くことのできないものであるので摂食後はすべてに優先して合成される。肝臓のグリコーゲンは空腹時に血糖濃度が低下すると分解して血中に放出され血糖補給に利用される。これは脳がグルコースしかエネルギー源として利用しないため脳がエネルギー不足に陥れば生命維持ができなくなるからである。筋肉のグリコーゲンは運動時のエネルギー源として利用される。軽い運動の際には筋肉は脂肪酸を優先的にエネルギー源として使うが,運動の強度が強くなると脂肪酸の酸化からではATP供給が間に合わないためグリコーゲンの分解と解糖系の働きでATPを供給する。運動の強度が強くなるとグリコーゲン分解量が増加して解糖系からのATP供給の割合が増加する。筋肉は運動時に血糖は決して使わない。血中に存在するグルコースの総量は5g程度(血糖濃度 100 mg/dL,,血液量 5 L)であり,糖の持つエネルギーは4kcal/g であるので血糖をすべて使っても20 kcal である。徒歩でも1分間に4 kcal 消費する。もし血糖が利用されるならば3分間もすれば低血糖になり生命の危機になりかねない。これを防ぐために筋肉には運動時に血糖を使わないでグリコーゲンを使う仕組みが備わっている(運動の項で解説予定)。筋肉では脂肪酸が優先的に利用されるが,脂肪酸の酸化で供給されるATPだけでは不十分であるのでグリコーゲンが枯渇するとごく軽い運動しかできなくなる。マラソンで疲れ切って足が動かなくなった時の状態と同じである。動物にとって筋肉のグリコーゲンは獲物を捕まえるときには無くてはならないもので,これが無くては生きてゆくことができない。このように筋肉のグリコーゲンも肝臓のグリコーゲンも生命維持に必須なものであるのでその合成は摂食後のグルコースの有り余っているときには最優先して行われる。しかし空腹時には合成されることはない。グルコースはあくまでも脳のためのものであるからである。