番外編:CoQ10のサプリメント 宣伝に騙されないように

 新聞の広告を見てこんなことがまかり通るのかと驚いた。それは新聞のページ全面を使ったサプリメントCoQ10)の広告である。以前にも述べたように生体内でのエネルギーはATPとして供給されるが,そのATPは摂取した糖質や脂肪を酸化した際に生じる還元性物質をミトコンドリアの電子伝達系で酸化することによって産生される。CoQ10は6種類のタンパク質とともにこのミトコンドリア電子伝達系を構成する脂質成分である。

 広告では文献から下図を引用して,加齢によってCoQ10が減少するという理由で体力の衰えた中高年者にサプリメントとして摂ることを推奨している。もしCoQ10のみが電子伝達系の他の成分に比べて大幅に減少しているならばCoQ10の摂取は効果をもたらすかもしれない。CoQ10の効果を主張するにはこのことをデータで示さなければならないが,加齢によるCoQ10の減少はミトコンドリア量が減少していることに起因しているから CoQ10が供給されたところで効果をもたらすとは考えられない。

 この広告にはもう一つ問題があった。従来は酸化型で摂取していたCoQ10を還元型にすることで効果が上がると鬼の首を取ったように宣伝していることである。電子伝達系の各成分は還元性物質による還元と酸素による酸化を繰り返していて,ヒトの体内ではCoQ10は1日に少なくとも30モル(22kg)が酸化されると計算される。そこに一粒100 mg(0.1ミリモル)のCoQ10の還元型が加わることでどれだけの効果があるというのであろうか。仮に効果を発揮するとしても300000分の1増えるだけである。誤差範囲にもはるかに及ばない量である。

一般人にこの広告のごまかしを見破ることを要求するのは無理かもしれないが,何事も疑いの目で見てできるだけ騙されないようにしたいものである。体力を維持しようとするならば適度な運動を続けることでミトコンドリアの減少を防ぐことが最善の方法である。

f:id:taisha1:20171030080038p:plain