CoQ10のサプリメントは摂るに値するか?

 以前にも書いたが,CoQ10 というミトコンドリア電子伝達系成分のサプリメントが新聞の1面をすべて使って大きく宣伝されているのをよく目にする。CoQ10は脂質の一種であって,他の数種類のタンパク質とともにミトコンドリアの中で電子伝達系を構成し生命活動のエネルギー源となるATPの合成に関与している化合物である。その広告では老化によって体内のCoQ10 量が低下することを図で示してCoQ10 を摂取するように訴えている。いかにも科学的なように見えるがよく考えればインチキ広告であることが分かる。確かに年齢を重ねるにしたがって体内のCoQ10量は減少する。しかし,同時にCoQ10が働く場所であるミトコンドリアそのものが減少し,その結果電子伝達系が減少しているてのであるから,電子伝達系の他の成分の減少以上にCoQ10量が減少することを示す必要がある。実際には他の成分の減少量以上にCoQ10が減少することはないのでそのようなデータを示すことができないのであろう。ミトコンドリアが無くなっているのにCoQ10を補給しても効果が得られるはずがない。丁度,老朽化でバスが使い物にならなくなった時にタイヤを補給するようなものであると思ってきた。所が,私はひょっとしたらCoQ10も効果が期待できる可能性があるかもしれないと思うようになった。

 私は10年前に心筋梗塞を患い,その後2,3年経ってからコレステロール値が少しだけ高かったためにコレステロール合成阻害薬を使い始めた。私はジョギングをしていて,心筋梗塞の後でもしばらくは10㎞を1時間程度で走ることができたが,最近は1㎞を走るのが精いっぱいである。年齢(現在は77才)のせいかもしれないが体力の低下がひどすぎる。この体力低下はコレステロール合成阻害薬を使用していることに因っている可能性があるのではと思っている。コレステロール合成阻害薬はその名の通りコレステロールの合成を抑えるが,これ以外にCoQ10 の合成も抑えるのでミトコンドリアの機能も低下した可能性が考えられる。もしこの推察が当たっておればCoQ10サプリメントも意味があるかもしれない。ただし,摂取したCoQ10 が消化管で分解されないで吸収され,さらに筋肉細胞に輸送されてミトコンドリア内に移行しなければならない。かなり難しい過程であるがこのことが示されるならばCoQ10サプリメントで摂ることの効果も期待できることになる。摂取されたCoQ10が筋肉のミトコンドリアに取り込まれることを証明するのは結構難しい実験になるが,CoQ10の摂取で運動能が改善されることを示すのは簡単である。コレステロール阻害薬を常用している人に運動負荷をかけて実験をすればよいことである。ただし,摂取したCoQ10が筋肉細胞のミトコンドリアに取り込まれることの可能性は否定できないだけで本当に取り込まれるかどうかは実験してみなければ分からない。かなり可能性の低いことと思うが誰かが証明してくれれば私も10㎞くらいは走れる希望が湧いてくるかもしれない。