霊長類がビタミンCを合成しなくなったのは腰痛が原因である

 ビタミンCをビタミンとして必要とする動物は霊長類とモルモットのみである。霊長類以外の殆どの動物では自身の体内で合成することができるのでビタミンCはビタミンではない。ビタミンCはコラーゲンの合成に必要であるので霊長類ではこれが不足すると血管壁,結合組織などが弱くなる。霊長類以外の動物ではビタミンC不足が起こらないから血管壁が強く脳出血を起こすことはない。また各地で競馬が行われているがレース中に肉離れを起こして馬が走れなくなったという話は聞いたことがない。馬では十分なコラーゲンが合成できるので強靭な靭帯や腱,結合組織が備わっているからである。このことはビタミンCの摂取が脳出血や運動時の肉離れなどのケガを防ぐのに役立つことを示している。コラーゲンは皮膚や骨においても重要な成分であり,ヒトではコラーゲンは体中のタンパク質の3分の1を占めるタンパク質である。これほど重要なコラーゲンの合成に必要なビタミンCをなぜ霊長類は合成しなくなったのであろうか。突然変異によってビタミンCを合成できない個体が生じたとしても合成できない方が有利でなければ合成できる個体に置き換わることはできないはずである。霊長類にはビタミンCを合成することで何か不利なことが起こったに違いない。

 私は昨年の夏頃より左足の付け根から大腿部にきつい痛みを感じるようになった。病院で調べたところ椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄が原因であることが分かった。その後かなりきびしい痛みに襲われたが何とか我慢できる状態が続いてきた。ところが最近になって痛みが特に激しくなり,歩くこともできず,ぐっすり寝ることもできない状態に陥った。手術は怖いと思っていたが,そんなことは言っておられず止む無く決意して手術を受けた。幸い名医に手術をして頂き今は痛みもしびれも消え快適な毎日を送っている。

 私の場合は大きく飛び出した椎間板ヘルニアにより脊髄の神経が圧迫されていたところに脊柱管狭窄で腰椎の椎弓の内側に生成した靭帯の塊りがさらに神経を圧迫して激しい痛みが生じたようである。脊柱管狭窄で生じた靭帯は主成分はコラーゲンであるが椎間板ヘルニアで飛び出した物体も主成分はコラーゲンということである。このことは霊長類がなぜビタミンCを合成しなくなったかは腰痛と関連があることを示唆していると思えてならない。

 サルは前足が手として使えるようになり完全な2足歩行とまではいかないまでも後ろ足に体重をかけて体を起こして生活する時間が長くなった。と同時に脳が大きくなり腰により大きな負荷がかかるようになった。なぜ脊柱管狭窄が起こるかそのメカニズムは分からないが腰への大きな負担がその要因となることは大いに考えられる。大きな腰への負荷によって椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄が起こりやすくなったところに,体内でビタミンCが合成されているとコラーゲンが合成し易くなりますます脊髄の神経が圧迫されて症状が厳しくなる。要するにビタミンC合成能のあるサルの群れには腰痛で動けないサルが多く居たと思われる。サルの群れでは縄張りをめぐって他の群れと争いが起こるであろうが,その時腰痛で戦いに参加できない個体を多く抱えていたのでは負けるのは明白である。このような戦いが繰り返されるうちに霊長類ではビタミンCを合成できる個体の群れは滅ぼされていったのではと思えてならない。

 この仮説が正しければビタミンCをサプリメントとして摂取している人は腰痛がきつくなりやすいはずである。ちなみに私はポーリング先生が推奨する5グラムほどではないが一日に1グラムほどのビタミンCを長年摂り続けている。ビタミンC摂取が腰痛を悪化させた可能性が考えられる。